膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)、通称「パテラ」は、チワワやトイプードルなどの小型犬で最も多く見られる関節疾患の一つです。愛犬が突然足を引きずるスキップのように歩く(ケンケン)といった様子が見られたら、パテラが疑われます。

発症には遺伝的要因の関与が指摘され、完全な予防が難しい病気です。そのため、高額になりやすい手術費用術後の長期通院に備えるうえで、ペット保険の活用は極めて重要です。本記事では、パテラの症状・原因から治療費の相場、保険の選び方までわかりやすく解説します。


1. 膝蓋骨脱臼(パテラ)とは?原因と症状の進行

パテラの概要と原因

パテラは、膝関節の「お皿」にあたる膝蓋骨(しつがいこつ)が、本来の滑車溝から内側(内方脱臼)または外側(外方脱臼)へ外れてしまう疾患です。以下の犬種で特に多く見られます。

  • 好発犬種:チワワ、トイプードル、ポメラニアン、ヨークシャーテリア などの小型犬
  • 主な原因:先天的な骨格のアンバランス・遺伝的素因。転落や激しい運動などの外傷が引き金になることもあります。

症状の進行とグレード分類

臨床的にはグレード1〜4に分類され、数字が大きいほど重症です。

グレード 症状の特徴
グレード1(軽度) 通常は正常位置だが、手で押すと外れる。無症状のことも多い。
グレード2(中度) 自然に脱臼と整復を繰り返す。スキップ(ケンケン)が時々見られる。
グレード3(重度) 常に脱臼しており、手で戻せてもすぐ外れる。明らかな歩行異常や跛行。
グレード4(最重度) 常時脱臼で手で戻せない。関節変形や慢性的な跛行が顕著で、手術が必須

2. パテラの治療方法と高額な手術費用

軽度では内科的治療(安静・体重管理・鎮痛/消炎・サプリメント)で経過観察することもありますが、進行や再発が見られる場合は外科手術が推奨されます(滑車溝形成、脛骨粗面転移など)。

治療費の目安(保険なしの場合)

治療内容 費用の目安(保険なし)
検査・診断 5,000円〜2万円(触診・レントゲン等)
外科手術費用 片足 20万〜40万円
入院費用 1日 5,000円〜1万円
術後の通院・リハビリ 1回 5,000円〜1万円(複数回想定)
合計の目安 片足の手術で30万円以上になることが一般的

※両足同時の手術、または反対側の後発・再手術のリスクもあり、生涯で100万円近い支出になるケースも否定できません。


3. 膝蓋骨脱臼(パテラ)に強いペット保険の選び方

パテラは高額手術+術後通院がセットになりやすい疾患。以下の3点を重視しましょう。

① 手術補償の年間限度額を重視

  • 確認点:年間の手術補償上限が十分か(例:50万〜100万円程度を目安)。
  • 推奨:自己負担を抑えるには補償割合70%以上が現実的。

② 術後の通院・リハビリを手厚く

  • 理想:通院の回数(または日数)制限がない/緩いプラン。
  • 注意:手術費に目が行きがちですが、通院費の累積も負担が大きい。日額上限と年間総額のバランスを確認。

先天性・遺伝性疾患の取り扱いを確認

  • パテラは先天/遺伝的要因の関与が大きく、約款で補償対象外となる商品もあります。
  • 加入前の発症・診断はどの保険でも免責(既往症)です。健康なうちの加入が前提。

4. パテラと保険に関するQ&A

Q1. 子犬健診で「パテラ・グレード1」と言われました。加入できますか?

商品・引受基準により異なりますが、一般に既往症として当該疾患が補償対象外になる、または引受不可となる場合があります。条件付き(パテラ不担保など)での加入を提示されることも。いずれにせよ診断事実は必ず告知してください(告知義務違反は支払い拒否・解除のリスク)。

Q2. パテラの予防法はありますか?

根本的な予防は困難です。先天的要因の影響が大きいため、完全に防ぐのは難しいと考えられます。ただし、体重管理(肥満回避)、滑りにくい床材の採用、段差の回避などで悪化リスクを低減できます。

Q3. 手術費用は全額補償されますか?

全額(100%)補償は一部商品に限られ、一般的には50%または70%です。例:
・手術費用30万円 × 70%補償 → 保険支払い21万円/自己負担9万円
なお、100%相当の設計を掲げる商品があっても、年間上限・日額上限・回数制限など別の制限が設けられている場合があります(約款確認が必須)。